HIKARU FUJII 藤井光 美術家/映画監督

No.73 2013-6-11

 

3.11とアーティスト/進行形の記録

Artists and Disaster / Documentation in progress
開催日:2012年10月13日~ 2012年12月9日
水戸芸術館

展覧会カタログより
……………………………………………………………………………………………………………

Q1. 展示で紹介する作品もしくは活動について、アーティスト・ステイトメントがあればご
教示ください。もしくは、おこなったきっかけや理由をおしえてください。

藤井光:世界における最大規模の災害・過酷事故に襲われ、家族の遺体を探すために大勢の
人々がさまよい続け、放射線に関する不確かな推測が錯乱するという、この危機的な状況の
中で、〈美学〉は何処へ向かうのかを問う。人道的な重圧から遠く離れ、私は被災地におけ
る芸術家たちの行動を映像で記録した。複製技術である映像メディアは、被災地における芸
術家たちの固有の表現を被災地の外部へと(時代を越え)伝えるだけでなく、映像に映し出
された芸術家たちの活動は批評の対象となる。ある時代、ある土地、ある共同体、そして個
人の主観の中で絶えず書き換えられ変容し続ける芸術を、私自身の空間と時間と思考のなか
で客体化すること。3.11以前、以降、何処であれ、私に出来ることは、いまだかつて誰も解
明したことのない芸術という流動体を集中的に問うことでしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.11 Art Documentation
Sendai Engeki-Kobo 10-BOX, 2 April 2011
2011 video documentation 4″00

……………………………………………………………………………………………………………

Q2. 災害や大規模事故を受けてアートのできることがあるとすれば、それはどのようなもの
だと思いますか。

藤井光:自然災害や過酷事故だけでなく、政治的、経済的、精神的な暴力を被る危機的な状
況において、「アートにできることがあるとすれば?」という問いを立てた時、〈問題解決〉
を強く求められる生活世界において、現代美術は激しく動揺する。前近代の時代に形成され
た宗教的・儀礼的芸術としての〈祭り〉が、再生=復興の技術として被災地において必要と
されたが、〈自由であれ〉と自律しようとした近代以降の芸術は、立ちすくみ、悩んでいた。
直面する危機を乗り越えるための技能性を芸術表現の可塑性に組み込めるのかという判断を
前に沈黙していた。それでも、ある者は決断し、個人を超えた社会的ネットワークの関係性
の中でその沈黙を開いていく。ある者は、海水を吸った死者一人ひとりの肺に歌をあてがい、
原発事故により壊されてゆく世界に対し詩的なやり方で報復する者もいる。またある者は、
3.11以前の個別・単独的な芸術生産を、沈黙を孕むその身体感覚を抱えたまま持続させよう
とする。アートにできることがあるとすれば、それは数々の仕方で、沈黙を壊すようなもの
だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.11 Art Documentation
Memorial Gathering at Minamisanriku-cho, 11 May 2011
2011 video documentation 5″06

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PROJECT FUKUSHIMA!
2012, documentary film 90min

……………………………………………………………………………………………………………

Q3. 今回の活動は、ご自身のアーティスト活動においてどのように位置づけられるものですか。

藤井光:記録された映像は、現実世界で起こった出来事を正しく映し出すのではなく、作者
の思考のなかで出来事を捉えた、ただのイメージにすぎない。それらをいくら積み上げても
現実に起きた出来事の総体的な知覚にいたることはない。3.11以降、膨大な量のイメージが
生産され、これからも制作され続ける。私が撮影した映像もまた、億単位の映像群の地平の
中のひとつとして位置づけられる。仮にそれらすべてのイメージを収集し、ネットワーク化
させ、集合させたとしても、3.11は表象されえないだろう。それでも私たちがイメージを創
り出すのは、その活動を作者がどのように位置づけようが、3月11日を忘れないためにある。
数々の空間と時間と思考のなかで創り出されたひとつひとつのイメージは、作者の意図を越
え連鎖していく。その結合と集積は、私たちの記憶=集合知となる。イメージはあらゆる類
化を逃れながら、歴史を構築する素粒子となって未来を動かすことに関与する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.11 Art Documentation
1st My Town Market, 10 July 2011
2011 video documentation 4″29

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.11 Art Documentation
Tanonteer Bus Tour, 26 June 2011
2011 video documentation 9″23

……………………………………………………………………………………………………………

2012年10月20日 水戸芸術館ACM劇場
ドキュメンタリー映画「PROJECT FUKUSHIMA!」
上映後、西村高宏氏をファシリテーターに迎えシネマてつがくカフェ@みとが行われた。

コメントは受け付けていません。

お問い合わせ:contact@hikarufujii.com